成年後見制度に関する考察

2022年10月12日 10:39
成年後見制度に関する考察

 成年後見制度は介護保険制度と両輪をなすものとしてスタートして、それまでの禁治産者等の登記制度を改めて、本人の自己決定の尊重、残存能力活用とノーマライゼーションを基本理念としたもので、もともとは親族等が後見人等になることを想定されていました。
 しかし、成年後見制度の利用はほとんどの場合本人が高齢であり、その後の相続にも関係していることもあって、親族間等のトラブルが発生する可能性を秘めています。
 例えば、成年後見制度の中の法定後見制度を利用するに際して、家庭裁判所に後見等の審判に関する申請において、長男等を後見人等候補とした場合、家庭裁判所より他の家族等に対して確認が行われ、後見人等候補に反対の場合には候補として挙げられた長男等は後見等になることができなくなります。
なぜ反対するのか、後見等になった場合に財産の管理を行う上で使い込み等の疑いを持ったりすることが挙げられますが、ここで問題なのはこの家族間のお互いに信頼のない不仲ということではないでしょうか。
仮に長男が後見人等になって二男や長女などが、長男に対して信頼が薄い場合、財産を管理させるなんて冗談じゃないということになってしまい、相続トラブルの火種となります。
また、実際に使い込み等によりトラブルに発展するケースもあるようです。
こういった家族・親族間のトラブルを避けるため、家庭裁判所は後見人等に弁護士・司法書士等の専門家を選出するようになりましたが、これもまた法定後見制度における問題点となってしまいました。
選任された専門家による財産の使い込みや被後見人等の家族等のトラブルなど様々な問題点が浮上しました。弁護士や司法書士等専門家の食い扶持のための制度と辛辣な表現をされることもあるほどです。
 法定後見制度は国が定めた制度ですが、家庭裁判所が選任した後見人等になる専門家が被後見人等となる人や家族の実情等を把握してそれに合わせた対応をせず、形式的な対応になりがちなこともトラブル発生の一因となるではないかと推測します。
法定後見制度においては、後見人等に誰がなるのか、ということがポイントとなります。
最高裁は、成年後見制度における法定後見制度の後見人の選任について、「後見人に相応しい親族など身近な支援者がいる場合には、本人の利益保護の観点から親族等を後見人に選任することが望ましい」との基本的な考え方を示しました。
 しかし、実際には家庭裁判所の裁判官の裁量により後見人等が選任されるので、必ずしも親族等が選任されるとは限らないというところが、制度を利用する側としては悩ましいところです。
 成年後見制度はご存知のとおり、法定後見制度以外にも任意後見制度があります。
最近は任意後見制度について案内する専門家が増えてきたようですが、成年後見制度がスタートしてから数年の間は、任意後見制度をうまく運用できる専門家が少なかったのかあまり認知されていなく利用自体が少なかったので、どうしても法定後見制度を利用せざるを得なくなり、様々な問題発生へと繋がってしまったのではないかと思われます。
 法定後見を利用するにしても、後見人候補等を挙げる上でちょっとした工夫をすることで後見人等と家族・親族等とのトラブル発生の可能性を低く抑えることも可能ではないかと思います。もちろん事前の準備等も必要になりますが。
 また、終活という言葉や概念が普及した昨今では、以前より比較的容易に任意後見制度を利用することを考えることも可能になったのではないでしょうか。
 任意後見制度を利用しあらかじめ備えておくにしても、慌てて法定後見制度を利用せざるを得なくなることを防止する上でも、まずは制度を利用する主な原因である認知症というものをよく理解しなければなりません。
 本人も含め、家族・親族等で認知症というものを学び、話し合うことで、いざという時に家族・親族等が同じ方針のもと対応していくことができるようになるのではないでしょうか。そうすることでトラブル発生の確率も低く抑えられるかもしれません。これも一つの相続対策です。
 認知症以外の障害等で成年後見制度を利用する場合には、専門家によく相談して制度自体をよく理解する必要があります。普段から懇意にしている専門家がいれば親身になって考えて対応してくれると思いますが、専門家とのお付き合いがない場合には、複数の専門家に聞いてみることも必要なのかもしれません。

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