配偶者死亡後の親族関係

2021年11月19日 13:41
配偶者が亡くなった後の親族関係をどうするか

配偶者が亡くなった後の親族関係を考える

 相続において揉める原因の一つとして寄与分があります。この寄与分は「特別の寄与」に該当しなければ認められないという特性があるため争いの原因となり得るわけです。
「特別の寄与」は、寄与の度合いが親族間で通常求められる程度を超えるものでなければなりません。
親族間では通常「扶け合い義務」があります。民法にも「直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならない(第730条)」という規定があります(この条文は訓示規定でしかないという説が有力ですが)。
 夫婦間においても当然「扶助義務(夫婦は同居し互いに協力し扶助しなければならない。第752条)」があります。
 夫婦間は当然のことながら親族間においても「扶け合う」ということが当たり前のこと(通常求められる程度のこと)とされているわけです。
 親族の範囲を確認しておきますと、6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族となります。
 相続の現場で見かける光景として、長男等の家族がその親と同居している状態で、長男等がその親より先に他界し、長男等の配偶者が義理の親とともに生活を継続しているというものがあります。
このような場合、長男等がその親より先に他界している訳ですから、長男等の相続に関しては配偶者は相続権がありましたが、義理の親に関しては養子縁組でもしない限り相続権がありませんので、長男等の直系卑属が代襲相続人として遺産を承継することで長男等の配偶者は納得し、そのために義理の親の面倒を看続けるというのがオーソドックスなパターンではないかと思います。
 相続法改正による「特別の寄与」の制度が施行されましたので、相続権はなくても「特別寄与料請求権」を行使することはできますが、他の相続人との関係や請求するための準備等、なかなか難しい点もあります。
 では、長男等が親より先に他界し義理の親の面倒を看ることになった配偶者に直系卑属がいなかった場合どうなのか、つまり、子供のいない夫婦が親と同居している中で、片方の配偶者がその親より先に他界し、遺された配偶者が義理の親と同居を続け面倒を看なければならなくなった場合です。
直系卑属がいないので義理の親の遺産を相続という形で承継することは基本的にはできませんので、長年面倒を看てきたことの所謂「見返り」となるものを手にするには養子縁組、遺贈、死因贈与等の方法を取ることになります。あるいは、相続開始後に「特別寄与料」を他の相続人に請求する、相続人がいない場合には特別縁故者の制度を利用するということになります。
いや、そんなことせずに、欲張らず単純に同居を解消すれば良いではないか、そうすれば義理の親の面倒を看るという苦労からは解放されるということも考えられますが、万が一、例えば、先に他界した長男等の相続時に長男が生前贈与を受けていた財産を配偶者が相続したなど、既に経済的対価を得ていたような「特別の事情」と認められるようなことがある場合には、直接には相続権を有さない長男等の配偶者であっても「扶養義務」から逃れないこともあります。民法877条第2項に「家庭裁判所は特別の事情があるときは、3親等内の親族間において扶養の義務を負わせることができる」と規定されています。「特別の事情」があると判断されれば、長男等の配偶者も義理の親の面倒を看るという義務を負わされる可能性があるということです。
しかし、「特別の事情」というものもケースバイケースで判断されるものですし、必ずしもそうなるとは限らないとも言えることであって、義理の両親やその他の相続人との関係や生活環境等の諸々の要因によって判断すべきことですが、考慮した結果、現状から脱したい、あるいは、そのような可能性から回避したいというような場合には、法律上、義理の親の面倒を看ることや他の相続人との関係を終了させることができます。
親族関係を終了させることで、義理の親の面倒を看ることを終わりにすることができ、他の相続人等の関係も終わりにすることができる訳です。   
民法第728条第2項において「夫婦の一方が死亡した場合において、生存配偶者が姻族関係を終了させる意思表示をしたとき、姻族関係は終了する」旨の規定があります。
そして、戸籍法第96条(民法第728条第2項の規定によって姻族関係を修了させる意思表示をしようとする者は、死亡した配偶者の氏名、本籍及び死亡の年月日を届書に記載して、その旨を届け出なければならない。)に従って姻族関係終了届をすることで可能となります。
 前述したような家庭裁判所によって扶養義務を命ぜられるようなことは、一般的には可能性の低いことかもしれませんが、親族でいることによって発生する様々なしがらみ等もあります。
親族関係を終わらせたいということであれば、相手の同意等は不要で、届出をすることで可能となりますので、方法論の一つとして覚えておいても良いかもしれません。

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